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SS『I can't be without you』

バナナ魚SS『I can't be without you』アップ。シン→暁、な感じ。

英タイトルは「あなたなしではいられない」、みたいなニュアンスで。進展前のお話なのでもう少しくだけた言い回しで「癒される場所」とか「ヒーリング ユー」的なタイトルにしようかなと思ってたんですけど、このタイトル、他カプで既に使ってたのでこんな感じの表題になりました。
どのジャンルにしろカプにしろ、こういう何気ない日常のお話を書くのが一番楽しいです。


バナナ魚/シン×暁





『I can't be without you』







「ちょっと仮眠させてくれ」
夕方には少し早い時間帯、合鍵で英二のアパートメントのドアを開けるなり奥に声をかけると、夏休みで絶賛ホームスティ中の暁がキッチンから顔を出した。夕飯の支度でもしていたのか、包丁を握ったまま「いきなりどうしたの」と目を丸くしている。
「上海から戻ったばかりなんだ。時差ボケでろくに寝てない。この後まだ商談があるから、ここでちょっと休んでく」
「まさか、空港から直接小英に送ってもらってきたの?自分ちに帰ったほうがゆっくり休めるんじゃない?」
「こっちのほうが近かったから。あー・・・もう限界・・・・」
ゲストルームには行かず、リビングでスーツの上着を無造作にイスに放ってタイをほどき襟元を緩めるとソファに倒れ込んだ。
「そんなとこで寝ないでベッドへ行ったら?」
「ベッドだと本格的に寝ちまいそうだからここでいい」
自分が今まで使っていた部屋は、こっちに滞在することが増えた暁に譲った。理由は他にも色々ある。もともと英二がアッシュの写真を個展に出したあの年以降、もう英二の傍についてなくても大丈夫だろうという確信と俺の学業が一段落したこと、MBAを取得したことで仕事がさらに多忙になり海外出張が増えてなかなか此処に寄れなくなったこと、俺付きのSPの防備上の都合ーーー等々。
そんなわけで、こんなふうにたまに英二の棲家に来る時は(というか泊まる必要がある場合だが)俺のほうがゲストルームを使うことになった。とはいえ暁を「女」として意識しはじめてからは、宿主が不在中の場合に限り彼女とふたりきりのひとつ屋根の下で寝泊まりしたことはない。尤も、そんな俺のささやかな気遣いに暁が気付いているのかどうかは不明だが。
目を閉じて行儀悪くソファに足を投げ出しているとふわりと甘い香りが鼻先を掠めた。仕事先でうんざりするほど嗅いでいるどぎつい香水や化粧品とは違う、彼女の瑞々しいフルーツみたいな自然な香りにほっとして、強張っていた身体からふっと力が抜けるのがわかった。
「そのまま寝ちゃったらシャツ皺になっちゃうよ?」
「ゲストルームのクローゼットにいくつかスーツ置いてあるからヘーキ」
「あ、そ」
気配が遠ざかったのでごろりと寝返りを打って腕を枕にうつ伏せになる。先にシャワー浴びてから寝たいところだが、それだと目が冴えてしまってもう眠れないだろう。うつらうつらしているとまた暁の動く気配がした。かと思うと肩からふわりとブランケットがかけられ、抑えたソプラノが遠慮がちに訊いてきた。
「ご飯食べてく?今からだったらシンの分も一緒に作れるけど」
「今日、なに」
「肉じゃがとお豆腐のお味噌汁、ポテトサラダとほうれん草のおしたし、キューリのぬか漬けの予定」
働かない頭でスケジュールを反芻した。たしかこの後の商談は会食も兼ねていたはずだ。けど仕事絡みのメシだしなぁ・・と逡巡する間もなく、当然の如く本命の女の子の手料理に天秤が傾いた。
「うまそう。起きたら食う」
1時間経ったら起こしてくれと言付けてクッションを抱き込むと、「了解」と返ってきた。

居心地のいい部屋、煮物の匂い、トントンと弾むリズミカルな包丁の音。小さくハミングする柔らかな歌声が鼓膜に優しく響く。
日本語・・・J-POPか。キッチンから途切れ途切れに聞こえてくる歌詞の内容からすると女性ボーカルの曲らしい。耳に残る心地よいスローテンポのバラード。
起きた時覚えてたら何の曲か聞いてみるか・・・。
うとうとと眠りに誘われて微睡む至福の時間。
このまま小英が迎えにこなきゃいいのに、と本気で思った。


長時間フライトでやはり疲れがたまっていたのか、いつの間にかぐっすり眠っていたらしい。優しく肩を揺すられて意識がゆるゆると浮上してくる。
「シン、起きて。1時間経ったよ?」
「・・・あと10分・・・」
「シャワー浴びてご飯も食べるつもりなら、もう起きた方がいいと思うけど」
ソファの上でうーんと身じろぎすると身体がバキバキと鳴った。いかん、最近運動不足だ。飛行機はファーストクラスとはいえ連日大陸をあっちへ移動、こっちへ移動じゃ身体が休まる暇もない。いい加減まとまった休みが欲しいところだ。
「おーい、シンってば」
「んー・・・・」
ソファで寝そべったまま目を閉じていても、彼女の気配が手に取るようにわかった。ものすごく至近距離で暁が長い髪を耳にかけながら上から覗き込んでいる様が容易に眼裏に想像できる。
「疲れてるのはわかるけど、起きて?」
肩に触れる手の温もりをもっと感じていたくて、俺の名前を呼ぶ軽やかな声をもう少し聞いていたくてーーーほとんど目は覚めていたけどつい寝たふりをする。
「こらぁ〜、起きないとくすぐっちゃうぞ!」
ここで「おはようのキスしてくれたら起きる」とか言ったら、絶対引かれるよなぁ・・・。いや、殴られるかも。
英二と同じくらいの全幅の信頼を寄せてくれるのは嬉しいが、まるで警戒されてないのも男としてみられてないようで何だか釈然としない。背中を優しく揺り起こすその手を掴んでベッドの中(今はソファだけど)に引きずり込むなんて容易いってこと、わかってんのかなこいつ。わかってねーだろうな。
まぁこんなこと、思うだけで実行なんかしないーーーできない、けど。
溜め息をついて、しかたなく身体を起こした。
「今、何時」
「16時半。何時にお迎えくるの?」
「18時頃かなぁ」
「ご飯用意しとくから今のうちにシャワー行っておいでよ。あ、一応バスタブにお湯張っておいたから」
まるで新妻のような甲斐甲斐しい台詞をさらりと口にして離れていく暁のエプロン姿を何となく直視できず、言われるままにバスルームに直行した。

「あー・・・極楽・・・」
バスキューブを溶かした乳白色の湯に浸かりながら、ユニットバスの天井を仰ぎ見る。日本式の風呂は最高だな、と出張帰りや大きな仕事のあとは特に思う。
もし暁と結婚したらこんな感じなんかなー・・・・。
悪くないかも、と思うと同時に苦笑した。
なに考えてんだ、俺は。
心では「ないない、そもそも暁がOKくれるわけないよな」と速攻否定してみたものの、しかし頭のほうはどうしたら暁を口説き落として煩い長老たちを出し抜き結婚まで持ち込めるかめまぐるしく計算とかしている、半分本気の自分がいる。
相手の顔色を伺いながら騙し合いするマネーゲームと一緒にしたらダメだとは思いつつも思考を止められない。そろそろマジメにこの難問に手をつけなければいけないことは少し前から自覚していた。けどそのきっかけがなかなか掴めないでいるのも事実で。実際こうして彼女と顔を合わせたのだって久しぶりだった。暁が今回訪米した当日に会ったきり、それからゆうに2週間経っている。このままじゃ、なんのアプローチもできないまま日本に帰国されてしまう。
ここはやっぱり、たまりまくっている有給をぶんどるしかないか、とひとりごちる。
よし、と勢いよくバスタブから出て冷たいシャワーを頭から浴びる。今かかっている案件をさっさと片付けてしまおう。そんでもって暁をデートに誘う。ちょっと奮発してカリフォルニアに連れてってやろうか。フロリダでもいい。わかりやすくユニバーサル・スタジオかディズニーワールド、もしくはナッツベリーファームあたりはどうだろう。いやいや、いくらなんでもいきなりすぎるか?じゃあ手始めに近場でーーーそうだな、ニューヨーク郊外でゆっくりするのも悪くない。ドライブがてらマサチューセッツあたりまで足を伸ばして老舗ホテルでランチでもして。今の時期ならちょうどダングルウッドでオーケストラの野外コンサートがあったはず。小英にあとで調べさせよう。
色々プランを練っていたら楽しくなってきて、俺は気分よく風呂を出た。


「あー美味かった。ごちそーさま」
「どうも、お粗末様でした」
久しぶりの素朴な和食を堪能した夕食の席で、今更ながら「そういや英二は?」と訊く。
「奥村さんなら仕事の打ち合わせで出てるけど、もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」と暁がコーヒーを淹れてくれながら答えた。英二ともここしばらく会っていない。その主がいない部屋でこんなふうに暁と向かい合って心づくしの料理なんか食べてると、ますます新婚夫婦の食卓風景のように思えて少々気恥ずかしさが募る。それにしたって何で俺ばっかりこんな落ち着かない気持ちにならなきゃなんねーんだ、と僅かに苛立ちも感じてさりげなく暁を窺ってみたが、まるで気にしてないような素振りにがっくりきた。しかしそれはそうだろうなと思い直す。何しろ彼女のガキの頃を知っているし、その頃に一緒に暮らしていたこともあるから家族のような感覚でいるに違いない。せいぜい歳が離れた兄妹、という認識だろうか。実際、自分もそれに近い気持ちで今まで彼女に接してきたのだから。けどもう、俺のほうはこの曖昧な関係のままじゃ満足できない。
もう少し現状維持するか、早めに仕掛けるかーーーー。
そんなことを考えつつ飲み干したコーヒーカップを置いたところで図ったように携帯が鳴った。見なくてもわかる、小英からだ。せっかく気分よく寛いでたのに、また今から仕事かと思うとげんなりするがそうもいっていられない。
携帯に「今行く」と告げ、身支度を整えてポーチに向かう。見送りについてきた暁にもう一度礼を言おうと振り返った俺は、口を開きかけてそのまま固まった。
「いってらっしゃい。お仕事頑張ってね」
「・・・・・っ、」
にこり、と上目遣いで小さく手を振る姿にくらりとした。不意打ちの笑顔のキョーアクなこと。何の計算もないだけによけいにタチが悪い。なんかもう、いろいろ限界。気がつけば腕を伸ばしていた。
「アキラ」
「ん?」
首を傾げた暁の顎をすかさず捕まえて掠め取るように桃色の唇にキスをした。暁は目を見開いたままぽかんとしーーー唇を離して至近距離で俺と目が合った瞬間、顔を真っ赤にした。・・・お、いい反応。
「な、なな、何・・・・!?」
風呂とメシの礼がわり、と言うつもりが口から出たのは全く別の台詞だった。
「何って、行ってきますのチューだろ」
「そんなことを聞いてるんじゃないっ」
暁とマウス・トゥ・マウスのキスをしたのはこれが初めてだった。唇をちょんとくっつけるだけの、いたって軽い挨拶程度のキスだが、それでも俺を男として意識してもらう最初の一歩になればいい。
「じゃ、行ってくるわ奥サン」
「だっ、誰が奥さんだーーーっ!!」
ーーーーあ、なんかデジャヴ。昔もこんなやり取りしたような気がする。
やり逃げしてくつくつ笑いながら閉めたドアの向こう側で「シンのバカ!!」とか叫ぶ声を背中で聞き、上機嫌で小英の待つ車に乗り込んだ。
「待たせたな、行ってくれ」
走り出した車の後部座席で思わず鼻歌を歌う。・・・そういやアキラが歌ってたジャパニーズソングのタイトル、聞き忘れたな。
「先ほどまで死んでたのに、随分とご機嫌ですね社長」
顔がにやけてますけど、と小英が気味悪そうにバックミラー越しに問うてくる。
「ん?んー・・・まぁな」
確かにアパートに駆け込んだ時とは気分がまるで違っていた。今は霧が晴れたみたいに頭の中がクリアだ。
心も身体もすっかり癒されている自分に軽く驚く。
たった3時間で数週間の疲れを取ってくれる彼女を、早々手放せなくなるのはもはや時間の問題だろう。
今度アキラの好きなケーキでも買っていってやろう。それまでに機嫌が直ってればいいけど。
ついでに意識でもしてくれて、イイ意味でちょっと態度が変わってれば尚良い。
「うーん。・・・やっぱ、早めに本気出すかな」
「何がです?」
「ナイショ」
とりあえず、外堀から埋めてくか。なにしろ彼女の周りには手強い過保護なおっさん連中がたくさんいるのだ。そして何より、本丸である彼女を捕まえたい。初めて触れた唇はひどく甘美な余韻を俺に残した。一度触れてしまえば、もうなかったことにするのは無理だった。またあの唇に触れたい。まずはそれを許してもらえるポジションを確保する努力が必要だった。
ーーー脅かさない程度に、次は少々強引に押してみよう。
難敵に挑む時と同じ高揚感にワクワクする。

流れるマンハッタンの夜景を車窓からチラリと眺めてから、目を閉じる。
今夜の商談はうまくいく予感がした。








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半分冗談、半分本気。けどオトナの男が本気出したら捕まるのは時間の問題。
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【 2015/05/12 】 SS | TB(-) | CM(0)
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プロフィール

チャコ@まま

Author:チャコ@まま
関西在住のおたママ。
只今三人の息子達を相手に育児奮闘中。

マンガ・小説・アニメ・特撮・舞台・ジャニ等、大好きなもの雑多な管理人です。
09/侍の殿様と11/海賊の船長と単車乗りの鳥系幹部を愛してます。現在、人類最強兵長敬愛中。

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