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SS『薄紅の向こう側』

孫家週間中に支部に上げた、DBのSS『薄紅の向こう側』です。新婚悟チチ。
桜の頃のお話なのでちょっと季節外れですが、もういいや。とりあえずアップしときます。
今、映画公開中ですよね。それにアニメも鳥山氏監修の新作が作られるとか。まだ続きやるとか、まじですか・・・。正直、私の中でドラゴンボールはセルゲームあたりで終わっているのでそんなに嬉しいとかはないんですけどね・・・。
ただ、昔大好きだったDBの絵師さんが何人か復帰されてたりしてそれだけは欠かさずチェックしています(笑)。その方の悟チチがめちゃくちゃ好きだったんですよー。特に学パロのカカチチとベジブル。学パロになると悟空は必ずどなたもカカロット仕様で描かれるのが面白いですね。カカで私も考えてるお話があるんですが、半分しかまだ書けてないのでいつになるやら・・。休止中の物書きさんにも、とても好きな方が何人かいらっしゃるのでそちらもまた復帰してくれると嬉しいんだけどなー。


DB/悟チチ







『薄紅の向こう側』







パオズ山にも遅い春がきた。


修行を終えての帰途、ふと見知った丘に舞い降りる。
そのままゴロンと草の上に寝転がってみたりして。
そろそろ陽が落ちようかという空の下、目に映るは一本の桜の木。
その大木は満開の花びらで覆われていた。

「あ~・・春だなぁ・・・」
そういやチチのやつ、花見したいって言ってたな・・・と頭上の桜をぼんやり眺める。
自分はそういうことにあまり興味はないけれど。
チチは時候の行事をまるで儀式のように遂行したがり、自分にもそれを強要する。
それが時には面倒だったり億劫だったりするのだけれど。
ここ最近は、それも悪くないと思えるようになってきた。
「明日、修行やめて花見にでも行くかな~」
きっとチチは喜ぶだろう。彼女が満面の笑みで応える様子が目に浮かんで、つい口元が緩む。


ーーーチチと二人、パオズ山に新居を構えたのが約一ヶ月前のこと。
天下一武道会ののち、フライパン山の火事だとか、祖父の形見のドラゴンボールを探して旅したりとかで、やっと二ヶ月目にしてひとつところに落ち着いて生活を始めた。
とはいえ、なにぶん初めての結婚生活。お互い戸惑うことも数知れず。
特に自分のほうに慣れないことが多すぎる。
日々の生活習慣はもとより、肝心の『お嫁』とやらに未だ慣れない自分がいる。
いや、慣れないというのは少し語弊があるかもしれない。
二ヶ月近くチチと一緒にいて彼女の性格もペースも掴めてきた。そういう意味では慣れた、といえる。
慣れていないのは・・・きっと自分の、チチに対する感情ーーーなのだと思う。

初めの頃はやたらとくっついてくるチチを煩わしく思っていたのが、日を追うごとに口で言うほど嫌じゃなくなっている自分に気付きーーーいつの間にかくっつかれるのが当たり前、それがないと逆に淋しいと感じてしまっていたり。
かといって、あまりにも密着されると今度は妙に落ち着かない。
修行をしているわけでもないのに心拍数があがって胸のあたりがもやもやする。

一緒に寝ていても、彼女に触れてみたいと衝動的に思うことがある。
華奢な肩口に流れる艶やかな黒髪、薄桃色の頬。透けるような白い肢体、折れそうな細っこい腰。どこもかしこも柔らかそうな肢体に無意識に手を伸ばそうとし、慌てて引っ込めるーーーその繰り返し。そして、そのたびに息苦しくなる。激しい修行中とはまた違う早く打つ鼓動に、思わずそっと心臓に手をあてる。
なんでこんな胸が苦しくなるんだ?オラ、何かの病気か?
彼女のことは好きだし、今更離れて暮らすなんて思いもよらない。
チチが一喜一憂するたびに自分の気持ちも同じように浮き沈みするほど、既に彼女は自分の一部になってしまっているというのに。時々、そんな自分の感情を持て余す。
でもその感情をどうしたらいいのか、この先どうなるのかがわからなくてとまどっている。
実を言うと、このところこんな調子で修行に身が入らず、早々に引き上げてきてしまうのだ。
そうして、今のように寄り道をしては考えに耽る。
誰かが気になって修行が疎かになるなんて、まったく自分らしくない。
ーーーこんなこと、初めてだーーーー
そんな気持ちの急激な変化に、自分自身ついていけないでいた。
「なんなんだろーなぁ・・・」
思わず溜息が出る。わかんねぇ。

ひとひらの花びらが鼻先に落ちてきて、手のひらで受け止める。
花弁を見つめていると淡い薄紅色がチチのふくよかな唇を連想させて、また落ち着かない気分になってくる。

ケッコンシキの時みたいに、あの唇に自分のそれをくっつけてみたいーーー。
そういうことをしている自分を想像すると、何となく後ろめたいような、それでいて何故か甘く痺れる胸の疼きに苦しくなる。
身体の芯の奥深く、鍵をかけて閉じ込めておいた何かが動き出すような気配・・・。
それは、風に揺れる桜にも似て、ザワザワと耳に響く。
「オラ、どうかしちまったんかなぁ・・・」
またひとつ溜息をつくと、今度こそ帰るために立ち上がった。


「え?桜・・だか?」
帰宅した自分を迎え入れ、夕餉の支度をしているチチに花見のことを切り出す。
「おう、ちょうど満開になってたからさ、明日にでも弁当持って見に行かねえか?」
先ほどまで悩んでいた諸々の感情を意識しないよう、努めて明るく持ちかけると「ホントけ?」と、チチはぱっと花が咲いたような笑顔を見せた。
そんな彼女を見ると、思い切って言ってみてよかったなと素直に思う。
・・・と。
チチがいきなり、あっ!と小さく叫び眉間に皺を寄せた。
怒ったり泣いたり笑ったり、彼女の表情はいつも目まぐるしく変わって忙しい。そんなチチを見ているのも楽しいと、最近思っている自分に気付いたりする。
「どうかしたんか?」
「明日はダメだ・・」
「なんで」
「明日は雨だって、さっき天気予報で言ってたべ。きっと雨で桜が散ってしまうだよ・・」
「そっか・・・だったらしょうがねえなぁ」
「もう!悟空さが修行休んで花見なんて珍しいこと言うから、明日雨になるんでねーだか?」
「なんだよ、オラのせいにすんなよな~。だいたい天気予報はオラが言いだすより前だろ」
ま、桜は来年も咲くし。とりあえずメシ、と言おうとすると、チチがポンと手を打った。
「そうだ!今から桜、見にいったらいいんだべ!」
「へ?今?」
「な、そうすべ!今夜は月も出てて明るいし、夜桜もいいもんだべ?」
「メシはどうすんだよ?オラ、もう腹ぺこだぞ」
お腹をさすってみても、チチは思い立ったが吉日とばかりに既に用意を始めている。
「何言ってるだ、花見すんだったらこのまま晩飯を持っていったらいいでねえか」
「・・・・・」
言いだしたチチにかなうハズがないことは、短い共同生活で学んでいた。


茜色の空を、紫の紗を纏った闇がゆっくりと覆っていく。
ついさっきまで一人ねそべっていた丘の上に、今は二人で立っている。
弁当を食べるには暗いかと思ったけれど、輪を作った月が意外なほど明るい。
月光が桜をぼんやりと照らす様はなかなかに風情があって、昼間見た桜とは全く違う雰囲気を醸し出していた。
はしゃいで駆け出すチチを見ていると、自分も嬉しくなってくる。空腹をガマンして来た甲斐もあるというものだ。
一本桜の木の根元に並んで座ると、早速チチが弁当を広げてくれた。

「きれいだなぁ・・・」
箸に手をつけることもせずチチが頭上の桜に見蕩れている間、自分はさっさと花見弁当となった晩飯をかきこむ。
「もう、悟空さったら食べてばっかいないで!桜、見ねえのけ?」
オラはさっき散々見たからもういいとは言えず、もごもごとおかずを口にほうりこんでごまかす。
呆れたように自分を見て、次いでチチはブルッと震えた。
「やっぱり、ちょっと寒いだな」
「そっか?オラは別に寒くねーぞ」
「そりゃ悟空さはな。・・・な、お酒持ってきたから、少し飲も?身体があったまるだよ。花見酒するだ」
「酒のむんか?・・おめえはやめといたほうがいいんじゃねえか?」
ちょっと前にふたりで初めて晩酌した時のことを思い出して控えめに言ってみる。その時チチは慣れない酒に酔って笑ったり泣いたり、挙げ句自分に散々普段の不満をぶちまけた上に寝てしまったのだ。とろんとした目でしなだれかかってきたいつもより熱く柔らかい躯にどうしていいかわからず、何とかベッドへ連れて行ったことを思い出して酒もまだ飲んでいないのに顔が熱くなった。
「どういう意味だべ?・・ほら悟空さ、一杯どうぞ」
「・・・おう」
まあ、いっか。チチが酔いつぶれたら自分がおぶって帰ればいいだけの話だ。

「ふぃ~、食った食った!」
やっと人心地つくと、ほろ酔いも手伝って久々に気分が高揚するのがわかった。
「悟空さほど『花より団子』って言葉が似合う人もいねえべな」
「そっかぁ?」
「そうだべ」
相変わらずうっとりと桜を眺めているチチを見ながら、そうでもねえんだけどな・・と思う。
アルコールが入ったせいかチチの頬は少し上気してほんのり色づき、桜と同じ色をしている。
ずっと見つめているとまたヘンな気分になってきそうで、そっと目をそらした。

ーーー本当に自分はどうかしている。
桜が、自分の心の中と同じようにざわめく。

チチがふふ、と口の端を上げて内緒話をするように声を潜めた。
「な、悟空さ、知ってるだか?桜の木の下には死体が埋まってるんだって」
「なんだそりゃ」
「死体が木の養分になって、こんなに綺麗な花を咲かすんだって何かの本で読んだべ」
「へ~。んじゃ、ちょっくら掘ってみっか?」
立ち上がって掘るマネをすると、素直で純真な彼女はすぐ本気にする。
「ごっ、悟空さ、そういう冗談はやめてけれ!」
慌てて立ち上がって腕を掴んできた。ふだん気が強いくせに、こういう時はしおらしくて可愛い。
誰かを「可愛い」と思うこと自体、自分らしくなくて苦笑する。
「なんだよ、チチが言いだしたんだろ?ほら、この辺なんかあやしいぞ」
「おねげえだから、もうやめて!怖くなるでねえか!」
ポカポカと叩いてくる腕を笑いながら躱す。
「はは、死体が自分から出てきても、オラがやっつけてやるから心配すんなって」
「それじゃ死体じゃなくて、ゾンビだべ!」
「ゾンビって何だ?」
「もういいだよ、その話は!」
「おいチチってばよ」
「知らねえ!」
拗ねて木の向こう側へ逃げるチチを追いかける。
・・・また風が出てきた。湿った空気を鼻先に感じて、明日は本当に雨になりそうだなと思う。
桜の枝がさわさわと揺れる。
チチをつかまえようと手を伸ばした先、彼女がふと立ち止まって頭上の桜を見上げた。
「でもほんと、怖いくらいに綺麗だな・・・夜だからそう思うんだべか」

・・・・怖い?

その時、ザァッと枝が揺れ、花びらが舞い散った。
薄紅が辺り一面に踊る。
桜吹雪の中、チチの姿が見え隠れしていた。
「チチ」
思わず呼んでみたけれど、チチは桜に目を奪われて呼ばれたことに気付かない。
結っていない長い髪が風に煽られて彼女の表情を隠してしまう。
薄闇の中で、桜とチチだけが月光に浮かんで見えた。
それは美しくて儚い、まほろばの夢のようなーーーー
さっき死体がどうのと、変な話をしたせいだろうか。どこかこの世のものではないようなその光景に、一瞬ぞっとする。
初めて、桜が怖いと思った。


そういや昔じっちゃんが言っていたーーー桜は美しすぎて人の心を惑わすーーーと。

そのせいだろうか、こんな気持ちになるのは。わけもなく心が騒ぐ。
いや、きっと桜そのものが怖いのではなくーーー花びらがチチを攫っていってしまいそうで怖いのか。
それとも彼女に引き出されようとしている、裡なる自分が怖いのか・・・。
ぎゅっと目を瞑る。
どこか遠くで自分の声がする。
ーーーいつまでもこのままじゃいられないーーー
わかってる。けど、もう少し。もう少しだけ、このままでーーーー。


「・・・悟空さ?」
はっとする。いつのまにかチチが傍に来て自分を見つめていた。
咄嗟に彼女の手を取ると、ドキドキするよりホッとした。
「・・・あんまり、遠くへ行くなよ」
「え?」
「・・・なんでもねえ」
「変な悟空さ」
くすっと笑ったチチに訳も判らず安堵して、強く彼女の手を握った。
チチは一瞬驚いた顔をして、けれどすぐに笑顔になって優しく手を握り返してきた。
今は、この手のぬくもりがただ、愛おしかった。「愛おしい」という言葉を知っていたわけではないけれど、言葉にすればきっとそれなのだと思う。絡めた指を離したくない。
ーーーーきっともう、手放せない。
「寒くなってきたし、そろそろ家に帰ろうぜ」
「ん・・そだな」
荷物をまとめ月明かりの中、手を繋いで家路を辿る。

そっと背後を振り返ると、永遠に花びらを散らすかのような薄紅の世界がまだそこにあって、少しだけ目眩がした。


ーーー薄紅の向こう側はきっと、とても怖くて、そしてひどく甘美な場所なのだろう。
だって彼女が其処にいるのだから。
こんな無粋な自分ですら誘惑される。
一度踏み込んでしまったらもう、二度と後戻りできないような場所。
でも其処にチチがいるなら、自分も行きたいと思うんだーーーたとえふたり、帰れなくなったとしても。

「・・・なぁ、チチ」
「ん?」
「これからもずっと一緒にいてくれっか?」
「当たり前だべ、おらたち夫婦になったんだもの」
だからずっと悟空さと一緒にいるだよ。
そう言って微笑う彼女にホッとして、繋いだ手をぎゅっと握り直した。

たとえ嫌だと言われても、自分はもうこの手を離すことはできないだろうと心のどこかで思いながら。









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新婚時代の、悟空→チチのちょっと自覚しはじめてもやもやしてる辺りが一番好きですかね。
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【 2015/05/11 】 SS | TB(-) | CM(0)
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プロフィール

チャコ@まま

Author:チャコ@まま
関西在住のおたママ。
只今三人の息子達を相手に育児奮闘中。

マンガ・小説・アニメ・特撮・舞台・ジャニ等、大好きなもの雑多な管理人です。
09/侍の殿様と11/海賊の船長と単車乗りの鳥系幹部を愛してます。現在、人類最強兵長敬愛中。

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