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SS『crescent moon in my heart』

年が明けましたね。皆様、よいお正月を過ごされましたでしょうか。
管理人、今年喪中につき新年のご挨拶は控えさせていただきますが、昨年に引き続きまったり亀更新でお話をお届けできたらいいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致しますvv


で、新年ひとつめ更新は進撃リヴァペトです。
SS『crescent moon in my heart』アップ。
このお話は以前支部のほうでもアップさせていただいた『眠れない夜の過ごし方』の番外編みたいなもの、です。
時期的に、どちらかといえばペトラ編の前になります。ペトラ編で出てきた壁外調査の、さらにひとつ前の壁外調査後という設定です(ややこしいですが)。
でもタイトルを新たにつけているとおり、設定を同じにしているだけで単発ものとして読んでもらえるようになってますので、これだけでも普通にお楽しみいただけるかと思います。
・・・・はっきり言って、途中がとってもアホな話です・・・・ええ。前半はシリアスだったのにおかしいな!

実はこの話、『眠れない夜の〜』番外編と支部で予告めいたことを以前お知らせしたことがあったので、はじめは支部に上げるべきかと思ったんですが、番外編のわりにえらく長くなってしまい、本編より長い話を番外編としてアップするのはいかがなものか・・・と悩んだあげく支部には出さないことにしました。
なので、もし支部から当ブログまでお越しくださった方がいらっしゃった場合の、お年玉的SSになればいいなと思っています。

今後何かのお話のおまけ的小ネタは、また思い浮かべばブログのほうでアップしようかなと思っています(あまりにも小ネタすぎて支部に出すほどではないものとか)。
進撃の続き物に関しては支部に出したい・・・と思ってます・・・書けたら、ですが・・・。途中で止まったままですいません・・・ホント。
あと転生パロとか、もう少しだけ書きたいものを書いたらリヴァペトはもう満足かなー。

他ジャンルに関しても例年どおり、のんびり頑張りますー。

ではでは、本年もよろしくお願いいたします!



進撃/リヴァペト





『crescent moon in my heart』







「あ〜遅くなっちゃった・・・」
夜も遅い時間にペトラは兵舎の廊下を歩いていた。
今日一日の任務を全て終えた後、さぁ寝ようかと私室へ戻る途中でハンジに捕まってしまった。彼女の巨人談義を軽くいなしながら少し仕事の手伝いをし、まだ残業するというハンジに「無理はしないで下さいね」と紅茶の差し入れを済ませ、やっと兵舎まで戻ってきたところだった。
消灯時間になれば当番が各所の灯りの火種を落として回る。既に半分ほど灯りが消えており辺りは薄暗く人の気配も殆どなかった。こんな時間に一人でウロウロしていれば見回りに咎められるため、自然急ぎ足になる。加えて今日は少し寒く、早く部屋に戻ってベッドに潜り込んでしまいたかった。
ーーーこんな風の強い夜は独りで眠りたくないなぁ・・・。
シンと静まり返った暗い通路があまりにも寂しく、急に人恋しくなってそんなことをふと思う。と同時に、脳裏に想い人の横顔が浮かんでペトラは微苦笑した。
ああ、そういえば今日はこちらにはいらっしゃらないんだった・・・。
溜め息をついて自分の部屋がある廊下の角を曲がったところで、ペトラはリーネと出くわした。危うくぶつかりそうになりペトラは慌てて体を一歩引く。リーネは道を譲った人物が後輩だと認めるとにこりと微笑み小さな声で、はあいと軽く手を上げた。
「ペトラ、今戻り?随分と遅いのね」
「はい、先程ハンジ分隊長にお茶を差し上げに研究室のほうへ行ってましたので」
「あらーハンジさんたら、また研究室に籠ってるの」
困った分隊長ねーと朗らかに笑うリーネは素敵な先輩だ。調査兵団の中でもハンジやナナバに次ぐ女性幹部の一人で、美貌だけでなく実力も人柄も申し分ない。酒が入るとやたらと絡んで恋愛話を根掘り葉掘り聞きたがるのがタマにキズだがそれもご愛嬌。実を言えばペトラもこっそり憧れている女性だったりする。
「リーネさんこそまだお休みにならないんですか?」
「ううん、いまから寝にいくところよー」
「え?でも・・・」
彼女の部屋はナナバ分隊長の部屋の隣だ。部屋がある幹部兵舎のほうから出てきたのにどこに行くのかと首を傾げると、リーネは声を潜めてペトラに耳打ちした。
「相変わらずそういうとこ、鈍い子ね。・・・男の部屋にい・く・の」
「おと・・・・・って、ええ!?」
リーネが唇に指をあててシーッと苦笑した。
「大きな声だしちゃダメよ、ペトラ」
「あ、は、はいっ・・・すいません・・・」
内緒よ?と言われ、こくこくと頷く。
洗いざらしの髪を掻きあげ、うふふと微笑するリーネは同性のペトラから見てもどきりとするほど艶っぽかった。今から男性の部屋に行くということはつまり、そういうことなのだろう。
「でも、あの、いいんですか・・・?」
「何が?」
「ですから、その、今は・・・・」
ペトラの言いたいことを察したのか、リーネは肩をすくめた。
「そうね。壁外から帰還したばかりで不謹慎って思われちゃうかもしれないけど。・・・彼の同期がね、今回の壁外調査で亡くなったの」
「え・・・」
「だから慰めにいこうかと思って。こういう時ってひとりで眠るのはつらいでしょう?」
何も言ってあげられないけどせめて傍にいてあげるくらいはできるから、とリーネは言った。
「そう、ですか・・・」
本当に、何も言えない。
今回もたくさんの同胞が壁外で亡くなった。個人的に特に親しい人は幸いなことにその中にいなかったが同じ兵団の仲間だ、誰も彼も全く知らないわけではない。一緒に訓練した誰か、前に同じ班にいた誰か、たまたま食堂で相席して世間話をした誰かーーーー毎回、見知った顔が必ず欠けていく。帰還するたびにそれを思い知るのはいつだってつらくて、悲しい。
しゅんと俯いてしまったペトラに、リーネは優しく言った。
「ペトラがそんな顔することないのよ?今回も無事に生きて戻ってこれた!って胸を張ってそのことを誇りに思いなさい」
「はい、それは・・・。でも、やっぱり仲間を失うことは別です。悲しいし、悔しいし・・・自分の非力さと無力さが不甲斐ないっていつも思います」
そうね、と少し眉を下げたリーネは、徐にペトラの肩にそっと手を置いて言った。
「ねえペトラ。あなたって結構自分の中でためこんじゃうところがあるでしょう?今は任務時間じゃないんだから、つらい時はつらいってちゃんと言って甘えたらいいのよ?」
「え?あ、ありがとうございます・・・・でも私は、」
別に、と言いかけた台詞に被るように紡がれたリーネの次の言葉に、ペトラは虚をつかれた。
「リヴァイ兵長はああ見えて意外と優しい人だし、あなたより大人だし、ベッドでも甘やかしてもらいなさいな」
「なっ!?なな、なにを・・・」
いきなり出てきた自分の上官の名前に狼狽える。しかも内容が内容で、一気に顔に熱が集まった。
リーネはからかっているふうでもなく、至極当然といった表情で続けて言う。
「なにって。無事に壁外から生きて戻ってきたご褒美に、兵長に甘えたらって言ってるのよ。せっかくだもの、たまにはあなたの部屋に来てもらったら?今だったら私もナナバも部屋を留守にしてるから周りに気兼ねすることもないし。あなたの隣部屋のハンジさんは殆ど研究室のほうだしね。今もそっちにいるんだったらちょうどいいじゃない」
「え、いや、でもあの、」
どこをどう否定したらいいか判らず、ペトラは赤くなったり青くなったりした。
「あああ、あの、へ、兵長は、今日は団長と一緒に壁外調査の報告会でシーナの商会へ行ったきりで・・・!」
「あら、こんな時間まで?・・・そういえば夕食の時も見てないな」
「そ、それに、兵長は私の部屋なんかいらっしゃったりしません・・・・」
「そうなの?・・・けど、ペトラの部屋が幹部兵舎に移ったのって兵長が来やすくするためだってハンジ分隊長が言ってたけど」
「ま、まさか、そんなわけないじゃないですか!ハンジさんが勝手に仰ってることですから・・・!」
とんでもないことを次々と言われ、上擦った声のまま答える。
どうしよう、何だかいろいろバレてる!?もしかしてどこかで見られてた?
しかし、だからといって肯定するわけにもいかなかった。ふたりの関係は秘密なのに、このままでは兵長に迷惑がかかってしまう。リーネは他に言いふらすような人ではないがさすがにこれは言えない。不安を押し隠してペトラは何とか笑顔を作り顔の前で手を振った。
「あの私、兵長とはそ、そんなんじゃ・・・」
「ふぅん?・・・・ま、いいけど。確かに彼がここに来るよりあなたが兵長の部屋に行ったほうがバレにくいものね。うーん、せっかくの分隊長の気遣いも兵長にはありがた迷惑だったかな?」
「は?」
「ううん、何でもないの、こっちの話。じゃあ、私もう行くわね」
「あ、は、はい。・・・・あの、おやすみなさい・・・」
「兵長によろしくね~」
「・・・・っ、リーネさんっ、ホントに違いますから!」
あはは、と笑いながら行ってしまった彼女の後ろ姿を見送った後、ペトラは脱力して思わず廊下の壁に凭れかかった。火照った頬に冷たい手を当てると幾分せわしなかった心臓の音が収まってくる。
「もぅ・・・・リーネさんてば・・・・」
でも、と思う。
リーネと自分とでは立場が違う。あんなふうに「恋人を慰めにいくの」と堂々と言える彼女とは違って、リヴァイと自分はそんな関係ではないとペトラは認識している。
リヴァイはペトラを愛してくれた。でも恋人かと言われると多分、違う。そういうニュアンスのことを兵長から言われたこともないし、自分もそれを望んでいない。だからこの関係は秘密にしなければいけないのだ。人類の希望を背負う彼が部下に手を出したなんて知れたら醜聞にしかならないだろう。調査兵団の士気も下がってしまうかもしれない。リヴァイがどう言おうと、ペトラのほうから彼の立場を悪くするわけにはいかない。
兵長から求められて始まった関係だけど、受け入れたのは私。
私だって・・・本当は兵長といつも一緒にいられたらいいなって思ってるけど。
「恋人」と呼ばれる立場になれなくていい。今みたいに兵長の一番近くで彼の背中を追いかけていられるだけでいいの。
リーネは「甘えたらいい」などと簡単に言うが、あのリヴァイに甘えるなど、リーネのような百戦錬磨の大人の女性ならともかくーーー恋愛初心者のペトラにはとても無理な話だ。
想いを掬いあげてもらっただけで泣きたいくらいに嬉しいのに、これ以上何を望むというの。
私は充分、今のままで幸せ。
ーーーーそれなのに。
ペトラは寒さのせいだけでなく、ふるりと震えた。両腕で自身を抱きしめる。
それなのに何故、こんなにも切ないのだろう。
どうしてリーネが羨ましいと思ってしまうのだろう。
公私において兵長を支えたいと願うこの心はおこがましいだろうか。
浅ましいほどの欲深さと過ぎた想いは、ペトラを兵士でなくしてしまう。
それだけはできない。

ペトラは廊下から空を見上げた。
夜の帳に浮かぶ月は弓なりに欠けている。
細る月の姿はまるで自分の淋しい心のようだ、とペトラは思った。




***



ペトラとリーネの邂逅からしばらくが過ぎた頃、同じ時間に同じ場所で今度は二人の男が邂逅した。


「あーもう、何処行ったんだよ分隊長はっ!」
モブリットはせかせかした足取りで兵舎を歩いていた。手には急ぎの書類を抱えている。例によって例の如く、何日も研究室に籠りっぱなしの上官を宥めすかしてやっと無理矢理風呂へ行かせたところだった。そして風呂上がりに食堂でナナバと夕食をとっているところまでは確認したのだが、その後ちょっと目を離した隙に姿が見えなくなってしまった。
「まったく、明日までに上げなきゃならない書類決済が残ってるっていうのに・・・」
ぶつぶつと文句を言いながら、モブリットは本部の中を上官を捜して歩き回った。生け捕った巨人のところか或いはまた研究室かとあちこち心当たりを覗いてみたがどこももぬけの殻。方々を探しまわってようやく通りすがりの女性兵士に「他の女性幹部の方達と宴会するって酒瓶持って私室のほうへ戻られましたが」と教えられ、モブリットはしかたなく幹部兵舎へと向かった。
もう消灯時間だがこの際しかたがない。書類提出の期限は明日の昼までだというのにこのあとリヴァイ兵長まで回さなくてはならないのである。あの泣く子も黙る眼光で「遅い!」と凄まれる自分を想像し、モブリットは思わず足を速めた。私室にーーー仮にも(あくまで仮!だ)女性のーーーまで押しかけるのは申し訳ないと思わないでもないが、兵長の不興を買うリスク回避のほうが勝った。ここまで仕事を溜め込んだ上官が悪いのであって決して自分は悪くない、とモブリットは考える。
それに火急の際は私室まで来てもいいと他ならぬ本人から言いつかっている。たとえ女性の部屋の前でうろうろして見咎められても、上官の名を出せば問題ないだろう。
「しっかし、宴会って。その前に仕事してくださいよ分隊長・・・」
先に書類にサインさせてから風呂に行かせればよかったと自分の判断ミスを嘆きつつ、女性幹部の部屋近くの角を曲がったところで意外な人に会った。
人類最強のふたつ名を持つ件の人に出会い頭にぶつかりそうになり、慌てて身体を引く。
「あ、兵長お疲れさまです。珍しいですね、こんなところで会うなんて」
「・・・・・ちょっとな・・・・」
いつもどおり不機嫌そうな顔で人類最強ーーーーリヴァイが言った。違う方向から兵長が来たということは、彼は自分の兵舎の私室から出向いてきたらしい。男性幹部の部屋は今しがたリヴァイが来たほうにあるのだ。てっきりそのまま本部にでも行くのかと思いきや、リヴァイが自分と同じ方向に足を向けたのでモブリットは首を傾げた。
「あれ、もしやハンジ分隊長に御用ですか?」
「・・・・。さっき一度、研究室を覗いたが誰もいなくてな」
「あ、そうなんですよ~。俺も行ってみたらいなくて。部屋に戻ってるって人に聞いたのでこっちに」
「ペトラにハンジから預かるはずの書類を取りに行かせたんだがな。一向に帰ってこねえから捜しにきた」
「あ、すいません・・・・それ、多分この書類だと思います・・・」
申し訳なさげに手にした書類を掲げると、リヴァイが舌打ちしたのでモブリットは震え上がった。
「部屋に行ったらすぐにサインしてもらいますので、ホント、すいません!」
上官の代わりに頭を下げつつもふと疑問に思う。
・・・・・あれ?兵長、わざわざペトラを捜しにきたのかな?それとも書類を取りに?
深く考える間もなくハンジの私室に着く。扉の向こうが何やら騒がしく、どうやら宴会をしているというのは本当らしい。リヴァイが扉を見つめたまま何のアクションも起こさないので、仕方なくモブリットがノックした。
「分隊長ぉー、いらっしゃいますか!?」
相当盛り上がっているようだからこっちの声が聞こえないんだろうな、と再びノックしかけたモブリットだったが、笑い声の中に漏れ聞こえてきた喘ぎ声にびくりとその手を止めた。
「あっ、やん・・・・っ」
こ、この色っぽいーーーもとい、可愛らしい声って・・・まさか。
「さぁさぁ、ペトラちゃああんっ!恥ずかしがってないで全部おねーさんに見せてみなさいっ」
「ちょ、ハンジさんっ、やめてください・・・・っ」
「ふひひ、やめてと言われたら余計にやりたくなるのが人間の性というものでね・・・・!」
「あ、やだ、そんなとこ触らないで・・・・」
「ふぅん、ペトラ、ちょっと胸大きくなってるんじゃない?」
「どれどれ?あら~、ホントだ。あ、もしかして誰か男に揉んでもらったとか?」
「リーネさんまでなに言ってるんですか!?」
「いつの間にこんな女らしい躯つきになっちゃって!オイタはいけないよ、ペトラ!あなたのたいせーつな上官殿に言いつけちゃうよ!?」
「え、リヴァイ兵長じゃないの、相手?」
「まさか。リヴァイがペトラに他の男近づけるわけないよ」
「ナナバさんっ、へ、兵長は関係な・・・って、きゃああ、リーネさぁん、何してるんれすかぁ」
「んー・・・あとでコレ見た兵長がどんな顔するかなーと思って・・・うふふ」
「ですから兵長は・・・・!」
「あ、ずるいよリーネ!私もそういうことしたい!」
「やめて、ハンジさぁぁん!」
な、ななな、なん・・・・何の話だよ!?
扉の前で思わず聞き入って固まる二人。
モブリットは青ざめ、手にした書類を皺がよるほど握りしめた。
何やってんですか分隊長おおぉおおーーーーーっっ!
放心から一転、心の中で絶叫した。
なんつーきわどい話を・・・・!ってか、よりによってリヴァイ兵長のお気に入りにちょっかい出すなんて、何て命知らずな!
ごくりと声にならない叫びを飲み込み、おそるおそる横目で隣を窺ったモブリットはひっと喉を引き攣らせた。
ああ、この人はきっと巨人を前にした時ですら、こんな顔しないよな・・・・と妙に冷静なことを考える。
平素と変わらない鉄面皮に見えるが、纏っている殺気が半端ない。他の者には違いが判らないかもしれないが、普段リヴァイに迷惑をかけまくっているハンジの数々の尻拭いをしてきたモブリットには判る。これはヤバい。
分隊長・・・・あんた今度こそマジで死にますよ・・・・。
モブリットの心配をよそに部屋の中では相変わらずガールズトークが繰り広げられている。声の様子からしてどうやらハンジとペトラの他はナナバとリーネがいるらしい。ペトラ以外は酒に強い女性ばかりだ。
「ねえねえペトラ〜、あなたモテるでしょーに、誰からの告白も受けてないってホント!?」
「そんなにリヴァイがいいのぉ?あんなのただの三十路潔癖男だよ?ペトラならもっと若くてピチピチしたイイ男を捕まえられるのに、チビの強面にはもったいないね!」
「ちょっとそこまで言うことないんじゃないの、ハンジ。ああ見えてリヴァイは部下思いだしあのブレード捌きを目の当たりにしたら兵士は誰だって憧れると思うけどね」
「そうれすよ、分隊長!わたしはへいちょをぶかとしておしたいしてるんれすからぁ~へいちょのことぶじょくするのはゆるせましぇん!」
「呂律回ってないよ、ペトラ。・・・それに部下としてじゃなく女としても、でしょ」
「ちがいます、ぶかとしてそんけいしてるんれす!」
「うーん、これだけ酔ってるのになかなか尻尾を出さないわねぇ。意外としぶといなぁペトラも」
「こう見えてペトラは芯が強いからね。リヴァイの不利になるようなことを簡単にゲロしたりしやしないよ」
「別に不利になるようなこと聞いてるつもりないけどな〜。だいたいナナバ、あなたがペトラはお酒に弱いからぽろっと本音吐くかも、って言ったんじゃない!」
「別にもういーよ、本音言おうが言うまいが。・・・どうせバレバレだし」
「そりゃそうね」
「何でもいいじゃない、面白いから」
「そうそう、そろそろペトラ捜しにリヴァイが来る頃だし!あいつ、こんな状態のペトラ見たらどんな顔するかな?ざまあみろってんだ」
「やだぁ、分隊長ったら兵長が捜しにくるのわかっててペトラ酔わせたんですかぁ?私、兵長に削がれるの嫌ですよ!?」
「だってリヴァイの奴、こないだ私の大事な、だいっっじなソニー&ビーンの手作り人形を踏みつぶしたんだよ!?許せると思う!?徹夜で仕上げた傑作だったのにさ!」
「だからって何もこんな幼稚な仕返ししなくても・・・どうなっても知らないよ?」
「だーいじょうぶ、何かされる前にペトラを突き出すから。あいつ、ああ見えてペトラに超甘いから、こんな状態のペトラ見たら他まで気なんか回らないって!」
モブリットは上官の暢気な笑い声に血の気が引いた。
世にも恐ろしい表情の人類最強はきっと今、自分の隣で手元にブレードがないことを心底悔やんでいるに違いない。
死に水は取りますからハンジさん!とモブリットは心の中でそう宣ったが、しかし、すぐさま部屋に突入するかと思われたリヴァイはなかなかその場を動こうとはしなかった。
あ、あれ?兵長、ペトラを助けに行かないのかな・・・?
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・おい、モブリットよ」
地を這うような低い声にモブリットは冷汗をかいた。もはや隣を振り返る余裕なんてない。ひたすら目の前の扉を見つめながら、声だけ何とか搾り出す。
「・・・・な、なんでしょうか・・・・・」
「お前、この扉を蹴破ってあの蛮行をやめさせてこい」
げっ、こっちにとばっちりがきた!
モブリットは逃げ腰になった。
「な、何で俺が!・・・あ、いえ、お、俺が、ですか?」
「ここはお前の上官の部屋だろうが」
そうだけど・・・そうなんだけどっ!
「しかし、上官である前にここは女性の部屋でして、さすがに俺としても女性の部屋に押し入るのはちょっと・・・・」
「あの変態野郎を女に分類すること自体、女全般に対する無礼だと思うがな・・・」
「いや、それはそうなんですがっ!や、そうではなくてですね、部屋の主はともかく、それ以外はれっきとした女性たちでしょう。そこに断りもなく入っていくなんて俺には無理です!」
「うるせえ、ノックしてもこいつらには聴こえてなかっただろうが。つべこべ言わずにてめえの変態上官に俺の部下返せって言ってこい」
「それ兵長が仰ってくださいよ!階級からいってもあなたが一番適役じゃないですか!兵長が命令したら皆言うことききますよっ」
「階級が上だから女ばっか(一部除く)のいる部屋なんざ無理に押し入れねえんだよ。ハンジの研究室ならともかく個室に押し入ったとなればいろいろ面倒だ。ヘタすりゃ職権乱用に問われるだろうが。お前が適任だ、行け」
「そ、そんなこと言われても」
「だいたい、暴走してんのは主にてめえの上官だろう。責任取ってやめさせてこいって言ってんだよ」
「そんな無茶な!あんな迫力ある人たちに俺ごときが何言ったって無理に決まってます!逆に俺まで剥かれちゃいますよぅ~」
それを想像してぶるりと身震いすると、我らが兵士長殿がぎろりとモブリットを睨んだ。
「・・・・・ほう。すると俺の部下は剥かれてもいいってんだな?」
ひいい!こっ、怖えぇぇーーーー!!
絶対零度の視線だけで殺されそうだ。ハンジさん、いつもこんな視線受けてよく平然としてられるよ・・・!さすがだ、とモブリットは変なところで自分の上官に感心した。
・・・って、いやいや感心してる場合じゃないだろ、俺!
「そ、そうは言いませんけど!でも少なくともペトラはあの人たちと同じ女性じゃないですかぁ!実害があるとは思えませんが・・・・ぐえっ!?」
言いかけた言葉は喉元で止まってしまった。リヴァイがモブリットの胸ぐらを掴んだからだ。
「実害がない、だと?お前にはあの悲鳴が聞こえないようだな・・・」
ぎりぎりと締め上げられ、モブリットは喉を引き攣らせる。
小さい身体でよくもまあ大の男一人を持ち上げられるもんだ、とどこか他人事のようにまた感心した。
・・・って、いやいや感心してる場合じゃないだろ、俺!
「へ、へいちょおおお!わ、わかりました、わかりましたから!」
離してくださいぃぃ~と両手を上げて降参のポーズを取るモブリットにリヴァイはようやく腕の力を抜いてやる。
ぜいぜいとモブリットは呼吸を整えた。鬼の形相で迫る兵長に逆らうなんて恐ろしい真似、やはりできるわけない。が、あの中に入るのも同じくらい恐ろしい。削がれるのも嫌だが剥かれるのも嫌だ。まさに前門の虎、後門の狼ーーーーモブリット絶対絶命、ああ、神様、助けてくださいぃぃ!
つか、ペトラぁ!お前自力で脱出してきてくれよおおおお!

モブリットは実はペトラとそれなりに仲がいい。モブリットは先輩、ペトラは後輩にあたるが、お互い少々変わり者の上官についているため気苦労が絶えない者同士、何となく親近感が沸きいつの間にか気心の知れた友人のような関係になっている。そうして付き合いが増えていくうちに彼女の兵長への密かな恋心も当然気付いた。ペトラは一生懸命隠しているようだがきっと周囲から見たらバレバレだと思う。
今のハンジたちの会話では、なんだかもう二人ができちゃってるようなことを言っていたが、そんな揶揄いは日常茶飯事なので本当のところリヴァイがペトラのことをどう思っているのかモブリットは知らない。ただ部下として可愛がっているのは身近で見ていれば判る。だからハンジたちの暴走は行き過ぎだと思うし酒の肴にされた気の毒なペトラを助けてやりたい気持ちももちろんあるのだが。
何も兵長を待たせている時にこの人たちに捕まらなくてもいいものを、とモブリットは頭を抱えた。
それを言うならこのタイミングでわざとペトラを捕まえた自分の上司のほうに問題があるのだが、そこまでは思い至らないようである。
「おら、何をちんたらやってんだ。さっさと行け!」
「うわっ・・・」
痺れを切らしたリヴァイがドアを蹴破る。そのまま返した足で背中から容赦なく蹴りを入れられ、モブリットは否応なく上官の根城に突入せざるを得なくなった。
バターン!
半ば無理矢理入れさせられた部屋は薄暗く、ドアを開けた瞬間に酒の匂いが鼻をつく。
「ぶ、分隊長、モブリットです!失礼しますっ」
ギャハハハ、と品のない自分の上官の笑い声に重なるようにいくつもの嬌声が室内を包み、モブリットは小さな灯りだけの部屋に目を凝らした。
そこに夜行性の獣の目ーーーーじゃない、ハンジの眼鏡が光るのを見つけたモブリットはその傍で酔いつぶれているペトラを発見した。
「ぺ、ペトラ・・・大丈夫か?」
「・・・・ふみゃあ・・・」
声にならないペトラの代わりに声を上げたのは自分の上官だった。
「おやモブリットじゃないかあ・・・・どうかしたの?」
「どうかしたの、じゃないですハンジさん!書類!この書類に早く目を通してくださいよ!仕事ほったらかして何暢気に宴会やっちゃってんですか!」
「あれ、まだ仕事残ってたっけ?まあいいや、モブリット、代わりにサインしといて~」
「バカ言わないでくださいっ!そ、それにその、兵長が部下を返せってそこで仁王立ちしてるんで早くペトラ返してあげてください!!」
「へえ・・・・やっぱり痺れを切らして迎えにきたんだリヴァイ」
「そうですよ、ですから兵長に殺される前に早くペトラを・・・・!」
「やだね。ーーーやーい、リヴァイ!可愛い部下を返してほしかったらここまでおいで!」
「ちょ、ちょっと分隊長、またそんな煽るようなことを!」
「お前も折角来たんだ、酒のませてあげるからこっちおいでよモブリット」
「いや、自分は・・・・!ギャーッ」
にやりと笑ったハンジにすかさずガッと首根っこを抑えられる。そーれっと喜々として酒瓶を口元に押し付けてくる他の女性陣に涙目になりながら、モブリットは外に向かって助けを求めた。
「へ、兵長ぉおお!!あ、あとは、頼み、ます・・・・・」


モブリット決死の救出はどうやらあえなく撃沈したらしい。悲鳴とともにか細い声が聞こえ、リヴァイは使えないやつめと毒づくと溜息とともにしかたなく足を踏み入れた。
ハンジの私室だからどれほど汚いのかとまずそこが気になったが、意外にも部屋自体はいたって普通だった。しかしそれとは別に女特有のきつい香水の匂いが一瞬鼻につき、そのせいか余計に淫靡な雰囲気に満ち満ちていた。
「酒臭ぇな・・・」
香水のもとはおそらくリーネだろう、それ以外できつい香水をつける女はこのメンツにいない。それよりアルコール臭のほうが香水臭よりもひどかった。女だけで一体どんだけ飲みやがったんだといくつもの酒瓶の転がる様にリヴァイは顔を顰めた。ハンジもナナバもリーネも酒豪だ。・・・自分の部下を除いては。
「へ、兵長ぉ~・・・」
情けない声にリヴァイが顔を巡らすと、ハンジに羽交い締めにされているモブリットが「助けてください」と目で訴えかけている。それを無視してリヴァイは部屋を見渡した。さして広くもない部屋の真ん中、円陣を組むように酒盛りするナナバ、リーネに囲まれるようにーーーーというか、ナナバの胸にしなだれかかっているペトラがいた。
どれほど飲まされたのか、顔はおろか耳まで真っ赤だ。兵服の第2ボタンまではだけており、シャツから普段は見えない鎖骨が覗いている。
「チッ、めんどくせえ・・・・」
「あーら、リヴァイ兵長だわ」
「モブリットに続いてあなたまでこんなところに来るなんてね、どういう風の吹き回し?」
「野暮だよ、ナナバ。兵長殿は可愛い部下を助けにいらしたみたいだしぃ」
「おー、リヴァイ!やっぱり来たね。一緒に酒盛りどう?ペトラもいるよぉ」
「てめえら・・・・揃いも揃って何してやがる」
「なにってえ、宴会だよ。ガールズトークでしょーが!」
「へいちょー、いくらペトラちゃんが大事だからってえ、女の園に乗り込むなんて無粋な真似、あなたらしくないですよ~」
「るせえ。くだ巻いてねえでさっさとペトラ返しやがれ、この酔っぱらいども」
「何言ってんのさ、これからがいいとこなのに!あ、なんならリヴァイもペトラの胸拝む?」
「ちょ、分隊長、またそんな!」
「モブリットは黙ってなさい!・・・ねえねえリヴァイ〜、どう?今ならペトラ酔ってるし内緒にしといてあげるよぅ・・・って、ああ、わざわざこっそり見なくてももう知ってるかあ」
「そうだな、今更だ」
ーーーーーへ?
モブリットは目を瞬いた。今、何かとんでもないことをリヴァイが言ったような・・・。
モブリットが回らない頭を必死で回転させている間に、周りの冷やかしや揶揄いを完全無視で部屋を横切ったリヴァイはナナバにくっついたままのペトラの襟首を引っ掴んで引き離した。そして自分のジャケットを脱いでペトラの肩にかけてやり、流れるような動作で素早く腰に手を廻し難なくその躯を抱き上げた。
ハンジの腕にホールドされたまま、リヴァイの動きを目で追っていたモブリットはその一連の所作に思わず見蕩れた。
すっげー、かっこいー。さすがリヴァイ兵長・・・・!こんな時でも冷静で無駄な動きがないなぁ。
モブリットのどこかズレた感心をよそに、当のペトラはふにゃりと締まりのない笑顔をリヴァイに向けた。
「あー、へいちょおだぁ~」
「・・・ったく。こんなになるまで飲まされんな、莫迦が」
呆れた口調を隠しもせず、リヴァイは抱いていたペトラをまるで荷物のようにひょいと肩に担ぎ上げた。
「やあん、へいちょ、何するんれすかあ!」
「変な声出しやがって・・・酔っぱらいは黙ってろ」
「酔っぱらってましぇん!」
「酔っぱらいは決まってそう言うんだよ」
「ちょっとおリヴァイ!勝手にペトラ連れて行くな!」
「あ?俺が俺の部下を連れていって何が悪い」
「ブッブー、もう就寝時間ですぅ~。勤務時間外だから今ペトラはリヴァイの部下じゃないよ、だからあなたが上司権限振りかざすのはお門違いだろ」
「屁理屈こねてんじゃねえクソメガネ。プライベートの時間だってんなら尚更こいつは俺の好きにできる。俺が俺のものを返してもらうんだ、これなら文句ねえだろ」
「あーそうくるんだ?」
ーーーーーあれ?
リヴァイたちの会話の応酬を聞いていたモブリットは耳を疑った。
そ、空耳?
やっぱり、何かとんでもないことを兵長がさらりと言ってのけたような・・・。
「ペトラ、お前はしばらく酒禁止だ・・・いいな」
「ええ~、へいちょのいじわる、横暴!」
「躾されてぇのか」
「いいです、へいちょうになら・・・何されても」
「ほう・・・その言葉忘れるなよ」
ーーーーーあ、あれれ?
今の兵長とペトラのやり取りも、随分と甘さが含まれていたような気がしないでもないような・・・・。
「まさかそのまま自分の部屋に持って帰るんじゃないよね、リヴァイ!?」
「キャー、送り狼さん?兵長すてきー」
「酔った娘をコマすなんて無粋な真似しないよね、リヴァイは」
「そのつもりだったのが、てめえらが横槍入れやがったんだろうが。今日は見逃してやるが今度こんな真似してみろ、本当に削ぐぞ」
じろりと顔だけ背後を振り返り、リヴァイは面倒くさそうに「書類を必ず明日持ってこいよクソメガネ」と捨て台詞を残して出て行った。
「・・・・・!」
今度こそモブリットは確信した。
ええーーーーーっ、マジで!?
あの二人やっぱりそういう関係!?・・・い、一体いつから!?
ではさっきのハンジたちの戯れ言もあながち嘘ではなかったのだ。
なんだ、ちゃんとペトラの気持ち報われたんだ・・・そっかぁ。
何だか温かな気持ちになり、よかったよかったとペトラの恋心が成就していたことをモブリットは心の中で祝福した。
しかし人類最強にあんな顔させてあんなことやこんなことを言わせるなんて、なにげにペトラってすごい。
もしかしてペトラがある意味、人類最強なんじゃ・・・・?
「あーあリヴァイの奴、とうとう認めちゃったねー」と確信犯的に大笑いするハンジに抱きつかれたまま、乱暴に閉じられた扉を半ば呆然と見つめるモブリットの横で女性たちはやれやれと肩を竦めた。
「・・・ま、これでペトラも兵長にちょっとは甘えられるでしょ」
「そうだね。たまにはお酒の力を借りるのもいい」
リーネとナナバは艶然と微笑むと、ふたりに乾杯、とグラスを重ねあわせた。



***



ハンジの部屋の隣、ペトラの私室のベッドにペトラをころりと落とすように寝かせたリヴァイは、ベッドの端に腰掛けると大変な重労働を強いられた後のような疲労感にはあ、と肩で息をついた。リヴァイの背後でおとなしくシーツの上に転がったペトラは気怠そうにひとつ呼気を吐き出しぼんやりとリヴァイを見ていたが、やがてこれでもかというほど甘い声をその背中に投げかけた。
「ねぇ、へいちょお?わたし、のど乾きました・・・」
「・・・・・」
甘ったるい声にぞくりと背中が粟立つ。思わず肩越しに振り返ったリヴァイは心底後悔した。
ハンジの部屋では暗くてあまりよく見えていなかったが、はだけたままのシャツから白い肌が誘うように覗いている。
思わず視線を逸らせ机の上に置いてある水差しを手に取る。備え付けのグラスに水を入れ、それをペトラの口元に押し付けた。
「ほら、飲め」
「・・・飲ませてくれないんれすかぁ・・・・?」
「・・・・。てめえの上官を使うとはいい度胸してんな」
毒づき、ペトラの顎を引っ掴んで水を飲ませる。口移しで飲ませてやろうかこの野郎と思ったが、そんなことをしたら自分の理性のほうが危ないので寸でで思いとどまった。
「おいしぃ~」
「ったく・・・あの変態どもに何かされてねえだろうな・・・・」
剥かれただけならまだいい。・・・いや、よくはないがこの際それはもういい。リヴァイはペトラのシャツに手をかけた。
「ちょっと見せてみろ」
「え、ええっ!?見せるんれすかぁ~?」
「なんだ、あいつらに見せて俺に見せられないってのはどういう了見だ」
「べつに自分から見せたわけじゃないれすよ~。それにー、ハンジさんたちは女性じゃないれすかぁ~」
先程のモブリットと同じ台詞をペトラも言う。
「あいにく俺にはハンジが女に見えたことなどねえな。あれはただの変態野郎だ。ナナバやリーネは女かもしれんが、女が好きな女だっているだろうが。・・ったく、どいつもこいつも油断も隙もねえ」
ぶつぶつ文句を言いながらシャツをまくり上げたリヴァイは眉間に皺を寄せた。
「おい、何だこれは」
「ふえ?」
「口紅みてえな痕があるぞ・・・・」
胸の真ん中、ふくよかな双丘の谷間に紅いものが付着していた。どうやら鬱血痕ではないようだが、誰かが紅をつけたままの唇で面白半分にキスでもしたらしい。
「てめえ、誰にこれをつけられやがった」
ごしごしと親指で擦り取りながら不機嫌を隠そうともせず訊くと、ペトラは相変わらず呂律の回らない口調でくすくす笑った。そしてあろうことかくすくす笑いのままゆっくりとした動作でリヴァイの首に手を廻し、耳元に唇を寄せてきた。
「それはたぶんー、りーねさんだと思いますぅ。いちゅーの人にぃ、こうやってちゅーしてー、しあげにそのひとの顔を見上げたらぁ、こうかてきめんだって、りーねさんがー」
ちゅ、と可愛らしいリップ音とともに柔らかい唇がリヴァイの頬に押し付けられる。普段の奥ゆかしいペトラではあり得ない大胆さにリヴァイは軽く瞠目した。
・・・・確かに効果覿面だ。今すぐ押し倒したいほどに。
「お前な・・・・こういうことは酔ってない時にしろ」
回された腕を剥がしとろんとした顔を覗き込む。そのまま仕返しのつもりで同じようにペトラの首筋に唇を寄せる。
「ふふ、へいちょ・・・・好き・・・・」
その囁きは確実にリヴァイの鉄壁の理性にクリーンヒットした。
「お前・・・、」
「ずっと、お傍にいたい、です・・・・」
リヴァイに抱かれている時でさえ、ペトラはこういった言葉を殆ど口にしない。遠慮しているのかーーーリヴァイが言わないせいもあるだろうがーーー甘えたり強請ったりといったことを殆どしないペトラに少々もの足りないと思っていたことも事実で。だから奥底に隠した本音をこんな形でふいに見せられると、どうしようもなく愛しさが溢れてしまう。鳩尾が甘く痺れ、リヴァイはペトラの首筋に唇を寄せたまま軽く歯を立てた。
「・・・・煽るな」
止められなくなったらどうすると言いつつ、だが言葉とは裏腹に吸い寄せられるようにその唇を奪った。
「ん、んー・・・」
何度か唇を啄み、より深く口付けようと舌を捩じ込んだがあまりの反応のなさにふと顔を上げた。
「・・・・・おい」
ペトラの顔を覗き込んだリヴァイはがっくりと脱力した。しどけなく胸元をはだけさせたままペトラは気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「てめえ・・・・この状態で寝るか、ふつう」
「むにゃ・・・・」
しばらくその寝顔を上からとっくり眺めた後、彼女を起こさないようリヴァイは頬にかかる髪をそっと梳いて流す。
「んん・・・・」
頬に触れた指先がくすぐったいのか、いやいやと身を捩るように顔を背けるペトラにリヴァイは何度目かの溜息をつく。
そもそも任務時間外に仕事の用向きを頼んでしまった自分に非がある。いや、わざと時間外に頼んだのだーーー部屋に呼ぶ口実を無理やり作って夜をともに過ごす算段で。しかしとんだ邪魔が入ったものだ。尤もらしくみせるためにハンジなんかのところへ書類を取りに行かせたのが間違いだった。
今頃自分の部屋のベッドでリヴァイ自身がペトラの服を剥いでいるはずだったのに何がどうしてこうなった。
甘え下手なペトラが酔ったはずみでぽろりと零した小さな本音は、実はリヴァイが密かにずっと望んでいたもので。だから本当は今すぐにでも甘えさせてやりたい。「お前はずっと俺の傍にいればいい」と抱いてあやして安心させたい。しかし当の本人が夢の中ではどうしようもない。
「くそ・・・、」
くしゃりと前髪をかきあげ、自分の中で暴れそうになる熱をやり過ごす。この部屋では抱かないと決めているだけに、ここで禁を破って寝込みを襲うような真似はできない。隣にいるやつらの思惑に嵌まるのもむかつくし、第一壁越しに聞き耳でも立てられたらたまったものじゃない。
・・・しかしまあ、このままじゃあまりにも癪だな。
頬に寄せたままの手を滑らせ、ペトラの顔の横に腕をつく。
リヴァイが体重をかけたせいでぎしりとベッドが軋んだが、彼女が起きる気配はない。
はだけた胸元の鎖骨あたりにまず唇を落とし、うまく力加減をして痕をつけた。
「おい。とっとと起きねえと明日の朝知らんぞ」
一応断りは入れてみたが、まあこの程度では起きないだろうことは判っている。彼女が目を覚まさないのをいいことにリヴァイはふたつ、みっつと白い胸にそこここに痕を残していった。
別にペトラが悪いわけではないが、こんな据え膳状態で放ったらかされた俺の身にもなれと言いたい。ようはやつあたりだ。
せいぜい、慌てふためけ。
リヴァイはくっと笑い少々溜飲を下げた。丁寧な手付きでペトラのシャツの乱れをなおし、シーツを胸元まで引きあげてやった。
今度俺の部屋に呼ぶ時はたっぷり可愛がってやる。・・・その痕が消えないうちにな。
「・・・・覚悟しろよ」
眠る彼女のおろされた瞼に最後にひとつ唇を落として囁くと、リヴァイは静かに扉を閉めた。
薄暗い廊下に出ると月明かりが差し込んでおり、リヴァイの姿を淡く照らす。
見上げると、壁外調査が終わった頃には欠けていた三日月がいつしか黄金色に満ち、まろい円を描いていた。
その優しげな色合いがまるで彼女の髪のようでーーーリヴァイはその口元に薄く笑みを佩いた。


翌朝、目が覚めて着替えようとしたペトラが胸元を見て悲鳴を上げ、何事かとハンジたちが部屋に飛び込んでくることになるのだがーーーーそれはまた、別のお話。







**************************************************
ようはあれです、兵長はちゃんと恋人扱いしてるつもりだけどペトラのほうはそう捉えてないっていう、ね。モブリットと兵長のやり取りの部分だけ先にパーッと浮かんで、ただの軽い話のつもりだったんですけどねー。なんだかえらくぐだぐだと長い話になっちゃいました。
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【 2014/01/03 】 SS | TB(-) | CM(0)
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プロフィール

チャコ@まま

Author:チャコ@まま
関西在住のおたママ。
只今三人の息子達を相手に育児奮闘中。

マンガ・小説・アニメ・特撮・舞台・ジャニ等、大好きなもの雑多な管理人です。
09/侍の殿様と11/海賊の船長と単車乗りの鳥系幹部を愛してます。現在、人類最強兵長敬愛中。

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